Tech Soupはタイムマシンを超えるか?プノンペンのテックカンファレンス・BarCampに行ってきたよ

BarCampという、テックカンファレンスに行ってきた。

今回はプノンペンの、Institute of Technology of Cambodia (ITC)というカンボジアでは技術系の最高峰の大学で開催されたが、去年はカンボジアの各地で行われたようで、シェムリアップ、バッタンバン、そしてラタナキリでも開かれている。


Barcampはオープンソースのアプローチで参加者主体で行われるカンファレンスで、カンボジアだけではなく世界中で開催されている。発祥はパロアルトだそうな。詳しくはWIKIPEDIAをどうぞ。

IT関係の様々な企業や個人がセッションや展示を行っていて、ずらりと展示が並ぶのは壮観だった。


カンボジアの経済成長も年7%だというし、少なくともプノンペンに関してはもう途上国ではないのだなと実感させる。

■百花繚乱のITサービス
Tech Soupと銘打たれた展示はその名の通り本当に多彩なものが一同に介しており、ITだけでこれだけ様々なプロダクトやサービスが出てきていることにカンボジアの勢いを感じる。

ホスティング、ドメインレジストラ、アプリケーション・デベロッパー、Web制作、ITコンサル、、少なくともプノンペンではIT開発には困らない印象だ。ただ某セッションで言ってたのだが、まあ玉石混交ではあるようだ(^_^;)


なんとなくJavaの求人が多い印象で、やはり大企業向けのSI案件が多いのだろうか。日本も昔ソフトウェア危機とか経産省がキャンペーンを張って技術者を大量促成しようとしていた時期があって、カンボジアもそれと似たようなフェーズにあるのかもしれない。

銀行など使ってる人は実感するようだが、オンラインバンキングもどんどん導入されていて、その裏で金融系ITエンジニアの屍が転がりまくっていないことを祈るわたくし(^_^;)

■UBERも上陸
情報サービスもプノンペンでは次々出ていて、今ホットなのは配車アプリだろうか。UBERやGrabTaxiが海外では有名だが、プノンペンでは地元IT企業の配車アプリも存在している。

しかし最近カンボジア(というかプノンペン)にはついにUBERが上陸し、ブランド名と金でシェアを買うがごとくのキャンペーンであっという間にメジャーになったようだ。


使い勝手としてもUBERはローカルのサービスよりずっといいようで、以下の記事でも危惧されているが、海外と同等のサービスを展開してる地元企業は黒船襲来にどう備えるかが課題となるだろう。

Don’t Know Whether Succeed Or Fail, But Take Quick Action: Pioneer Of Uber-like Apps In Cambodia, Mr. Daluch & Ms. Annabel | CONPATH 6-Month Internship Program at Cambodian Startups

知り合いがInnovation hubs in Cambodiaというサービスを始めて展示していたが、こういうものも活用してどう有用な情報やインスピレーションを得るか、強いエコシステムを作れるかがキーだと思う。

日本のケーススタディとか絶対やるべきやけどなあ。

■仮想通貨、ロボット、教育サービス
また仮想通貨関係の会社も1つだけ出展していて目を引いた。マイニングファームってことだけど、そんな大規模投資が必要なことが本当にできるのか?とちょっと思った。

マイニング・マシン(ボード??PCかな?)も売っていて、収入はその販売とファームで取るテラ銭なのだろうが、ファーム自体がどこにあるどういうものなのかとかいろいろ分からない。

カンボジアは電気代も高いし、ファーム自体は海外にある外資ってことなのかなーと想像。無料セミナーもやってるらしいので機会があったら行ってみたい。

また珍しいところとしてはロボットを扱う会社があったり、


あとはeLearningや学校など、教育サービスがいくつもあった。新たな労働市場に参入するために、そういう需要がBOOMしているのかもしれないね。

■勃興するビジネス・エコシステム
レジストラやホスティングサービスがあるので、Wordpressあたりで自分のサイトを作るくらいならすぐできる。Web制作の会社もあるので見栄えのいいサイトを作ってもらうこともできる。

SIerらしき会社もあり、コンサル会社もある。何よりたくさんの教育サービスがある。IT業界志望の人に様々な活躍の場があり、そこに人を育成し送り込むシステムもあるわけだ。

玉石混交の状態から徐々に品質と信頼を積み上げるIT企業が出てきて新興サービスを裏で支え、それによって経験を得てさらに高品質なITサービスを提供できる、というサイクルでエコシステム全体は徐々に強くなってゆく。

そういう土壌から様々なサービスも出てくることが可能となっている。先に書いた配車サービスもそうだし、他に有名どころではbookmebusだろうか。


ただ、こういう先進国にはよくあるサービスは、資本があればあっという間にマネできるものでもある。言語をローカライズするだけで使える海外サービスはいくらもある。

だから市場が十分大きくなったときに巨大資本が(UBERのように)やってくると、ローカル企業は簡単に存亡の危機に晒される。

■「なんでも作れる」から「何を作るか」へ
この脆弱さは「強さ」ってなんだろう、という問いに私たちを導く。とりあえず資金さえあれば何でも作れるところまで来たのであれば、次の問題は「何を作るか」である。

カンボジアローカルのITサービスは、日本のネットバブルの頃にもてはやされた、いわゆるタイムマシン経営のように見える。

しかし今はその頃とは比較にならないほど簡単にサービスが国境を超えるので、ネットの普及で成立したサービスが、同じ理由であっという間に淘汰され得る。

これは現在のネットサービスが置かれた構造的な問題であるので、それ自体を止めることはできない。だからその現実を踏まえて、素早く細かく事業を展開しては撤退してを繰り返して、その中で簡単に真似出来ない独自性とブランドを作っていくしかない。

そのためには何がコアバリューなのか?に深い洞察が必要だし、バリューをめぐる、技術と金の強靭なagileさに生命線がある。逆に言えば今あるサービスを死守しようと身を固くするのはとても危険である。

なんてゆーか日本のチームラボとか参考になるように思う。

■タイムマシンを超えて
サービスが淘汰されても人は残る。その厳しい状況の中で、自分がいったい何を価値だと感じているか、それぞれが向き合わざるを得なくなる。

それこそが独自性の源泉であり、自社が価値あるブランドを帯びてゆく過程である。何を作るか以前に、その過程を作動させることが重要である。正解など無いので、自分の創造性に教えてもらうしかないのだ。

例えば配車サービスなら、そのサービスでいったい自分は何をしたかったのか?

何を可能性だと、意味だと思ったのか?そうして価値のコアも深まりあるいは創発してゆく。そこに経営資源を配置し直し、単純なタイムマシンからピボットしてゆく。「何を作るか」が徐々に姿を現す。

それを支援・切磋琢磨しあうことができたとき、次のレベルのビジネス・エコシステムが、カンボジアに創発しているのだと思う。


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コメント

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